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WordPressでサイト構築を手掛ける前に(1) -WordPress を選ぶ条件【入門者向け】

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WordPress(ワードプレス)は、ホームページを構築する際に、検討から外せない選択肢となっています。それ自体が無料で手に入る上に、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)として圧倒的なシェアを持っていて、大勢が使っているという安心感があります。

かく言うこのサイトも、WordPressでできています。

・WordPress、世界のWebサイトにおけるシェア40%達成
https://news.mynavi.jp/techplus/article/20210212-1725685/

TECH Plus(2021/02/12)

CMS というのは、ひと言で書くと、投稿システムです。管理画面から投稿した記事などの情報が、決まりごとに従って整形して表示される仕組みのことです。投稿した記事や、表示のための設定は、データベースに保存されます。構成によっては、表示するレイアウトやデザインの部分が、独立したシステムになる場合もあります。様々なプログラムが裏にあって、投稿者を管理画面にログインさせたり、執筆した記事をデータベースに保存したり、それを読み出して管理画面に表示・プレビューしたり、訪問者が読める表側のページに表示します。それらが、専門知識のない人でも投稿できるように稼働しています。

こうした投稿システムがあるおかげで、どこに文字を打てば記事のタイトルになるのか、どうすれば本文の段落になるのか、技術的知識がない人にも分かるようになっています。CMS ごとに特有の決まりごとやルールを覚えて慣れる必要はありますが、それでも、Web制作のための技術を覚えて自作するよりは、ずっと速く簡単に記事を投稿することができます。

※ この記事の目的と筆者の立場について

筆者自身は、最初に WordPress をインストールしたのは、2009年のことでした。その後、公私延べ十数件のWebサイトで WordPress を設置し、運営に関わっています。主にほかの人が投稿するために、新しいサイトを構築したり、その仕様変更、保守などを行っています。自分で記事を執筆することは稀で、WordPress を専門にしているわけではなく、技術的にもまだ浅い知識しかありません。

それでも、「WordPress とは何か」を、それなりに多角的に説明することはできるだけの経験は積んでこられたと思っています。今となっては WordPress は広く知られているようでいて、全く知らない状態から、「WordPress とは何か」を俯瞰的にイメージすることは容易ではありません。それぞれの方の前提知識に依りますが、偏ったイメージで悩んだり判断を誤ることは、今でもあると思っています。

感覚的な説明も多くなりますが、主に初めての方への助けとなれるよう、なるべく平易に、これまでお世話になってきた WordPress コミュニティへの還元も兼ねて書かせていただきます。よろしくお願いします。

WordPress を選ぶ条件

今、情報を発信する、というだけなら、いろいろな選択肢があります。そもそも、インターネット上でなくてもいいかもしれません。それでは、どういう場合に、WordPress を使うことが有力になるのでしょうか。前提となる方向性を語ってみます。

▼ 継続的に情報を発信したい

1回だけや短期間ではなく、情報を追加したり更新したりしながら、まとまった期間、情報を発信することに適しています。わざわざデータベース付きのシステムを設置するのですから、発信したらすぐ流れ去っていいような情報発信とは、あまり合っていると言えません。少なくとも数ヶ月から数年発信を続け、仮に役割を終えて更新されなくなってもしばらくは残したいような場合が適していると思います。

▼ 発信側が整理した形で情報を発信したい

他の人や他の団体の情報と混じって並ぶのではなく、発信者の考えで整理した形で、まとまった構成の情報を発信することに適しています。各記事等に、カテゴリーやタグといった「しるし」を付け、それごとに分類して、投稿日順などの決まった順序で表示させることができます。WordPress に限らず、自分の WebサイトやBLOGを持って運営するということは、そういう意図を持っているということでしょう。SNSなどに比べて、自分でコントロールした表示がしやすいです。

▼ 広く情報を発信したい

比較的誰にでも見てもらいやすい、というのは、インターネットの特徴のひとつです。ページにパスワード制限を掛けることもできますが、少なくとも入り口までは多くに人にたどり着いて欲しい場合には、インターネットを使うことは有力でしょう。対照的に、例えば特定の地域や関係者だけに知らせたいならば、チラシやDMなどの手段も考えられます。
なお、どのようにして検索で上位に表示されるか、というのは、また別の話です。WordPress を使ったとしても、個別の努力が必要です。

▼ 投稿システムを使いたい

Web に対して技術的知識がない人でも、インターネットに接続でき、キーボードなどで文字を入力できる人は、投稿システムがあれば投稿できます。また、Web の知識のある人でも、技術的方面に並行して気を取られない分、執筆に集中できるかもしれません。また、複数の人が投稿する場合を考えると、投稿システムがあった方が運営しやすいでしょう。
裏返すと、投稿システムが欲しくない場合は、WordPressを使わない方がいい場合が多いと思います。システムが存在することで、技術的に複雑になり、システムの保守が必要になるからです。一度公開したらほとんど更新しないような場合、あるいは、更新を技術のある人に頼めることが前提の場合は、CMSを使わない選択肢も検討しましょう。

サイト内で投稿を使う例としては、お知らせ(新着情報)、日記・ブログ、イベント・催し、商品情報などが考えられます。

▼ 自分でコンテンツを保持したり移設したりしたい

誰でも簡単に Webサイトを作れることを謳うサービスの中には、作ったサイトを他のサーバーに移せないものも多数存在します。ドメインを変えることでURLを引っ越すことは、たいていのサービスでできますが、サイト全体を他のサーバーに移したり、どこかのドメインの下のディレクトリに表示させたりはできないことが多いです。それは、決まったサーバーにある非公開のシステムを使うことが前提だからです。
WordPress は、オープンソースで、誰でもシステムのデータを入手できます。それを、自分の選んだWebサーバー上にインストールして使うことができ、その場合は、後から自由に引っ越しができます。WordPress を利用したブログ・サイト構築サービス(ホスティングサービス)もありますが、その場合でも、投稿した記事を書き出して、別途他の場所にインストールしたWordPressに読み込ませることができます。つまりは、使っていたサービスが終了することになった、という場合に、引っ越す手段があるのです。

▼ 投稿システムを安く使いたい

投稿システムは、表側に閲覧できるページに比べて、技術的に大変複雑です。ひょっとすると、「編集できるシステムなんか、ちょいちょいと簡単に追加できるのだろう」と誤解している方もおられるかもしれませんが、WordPress にしても、何千というファイルに何十万行というコードが書かれたシステムなのです。ただ記事が読めるだけの部分を作るのとは、複雑さの桁が違います。
その複雑なシステムを、WordPress は無料で入手できます。世界中の有志のメンバーが長年、労力を提供してくださってきたお蔭です。新しいバージョンが出たときも、引き続き無料です。運営するには、システムだけでは成り立たず、サーバーやドメインなどが要るのですが、それでも、いちから開発することを考えるとどうでしょうか。
使いたいシステムの要件が、WordPress に近ければ近いほど、WordPress を使う理由になります。

▼ 自由にオリジナルのデザインを適用したい

SNSや従来のブログシステムに比べると、自由に設置できる WordPress のほうが、レイアウトやデザインは自由です。出来合いのテーマ(※表示テンプレートのセット)を選ぶこともでき、無料で使えるものも何千種類とありますが、独自のデザインを好きなように適用できます。発信する内容だけでなく、オリジナルのデザインでブランディングしたい場合などは、WordPress は適していると言えるでしょう。
ただし、予算や、構築にかけられる時間の制約はあります。コストを掛けられない場合は、無料の公式テーマから選びましょう。また、ホスティングがセットになったサービスでは、契約プランにより、テーマのカスタマイズに制約があったり、自前のテーマを使えなかったりします。自分で Webサーバーを用意してインストールした方が、自己責任が大きな分、自由度も高くなります。

▼ ついでにいろいろな機能のあるWebサイトにしたい

詳しくは稿を改めますが、WordPress では、様々な機能を追加して使うことができます。

例えば、お問い合わせフォームを使いたいけれど、フォームを自分で設置するまでのスキルがなく、URLはサイト本体と同じドメインのままにしたいし、できればデザインもサイトに合わせたい。そういう場合に、WordPress を検討する動機になるかもしれません。

WordPress 以外の CMS やホームページ作成サービスでも、多くの機能がありますが、利用者の多い WordPress では、無料でも使える機能の多彩さが群を抜いていると思います。

▼ 投稿システムをアレンジしながら使いたい

WordPress は、そのコード自体に、著作権を主張していません。逆に、それをどうアレンジしようと、使う人の勝手で、自己責任で自由にできます。ただ、アレンジした結果にも、アレンジした人が著作権を主張することを禁じていますが。この辺りのオープンソースの思想はひと言で説明できないので稿を改めますが、「WordPress GPL」などと検索してみてください。
要は、入手した投稿システムを、さらに自由に追加アレンジして使えるのが、WordPress の重要な特質ということです。どこか特定の会社が独占開発しているシステムの場合や、WordPress でも、ホスティングがセットになったサービスを使う場合では、こういうことができません。

▼ おまけ:自分も WordPress に貢献したい

WordPress は、世界中の多くの人のボランティアに支えられています。貢献の求められる部分はたくさんあり、大抵いつも人手不足なので、手助けを申し出れば歓迎されるでしょう。
貢献の求められるのは、開発技術だけではありません。フォーラムで投げかけられた質問に答える人、地域でのイベント開催を手助けする人、イベントに登壇して発表する人、イベントの公式サイトをデザインする人、英語で書かれたページや英語だけに対応した成果物を日本語に翻訳する人、いろいろな人がいます。何も技術が分からず、記事の文章を書いているだけの利用者であっても、その経験を公開することも貢献になりえます。
特別な貢献なしでも、利用に問題はありませんが、こういう価値観に親和性のある人は、WordPress を応援する理由になるでしょう。

今後のこのシリーズについて

WordPress を使うと、簡単に素早く Webサイトを作ることができるのでしょうか。これは、視点によって、Yes とも No とも言えます。

そうした、ひと言でパッと切れない物ごとの襞を、いろいろ書いていきたいと思っています。


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